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ブルゴーニュ日本人女性醸造家 栗山明子氏とのシャントレーヴワインセミナー「土づくり」

ブルゴーニュ日本人女性醸造家 栗山明子氏とのシャントレーヴワインセミナー「土づくり」

コラム | 2024年1月19日 | ソムリエ吉間

2010年ネゴシアンとしてスタートしたシャントレーヴ。
2020年に5ha弱の畑を買い足し、半分以上がドメーヌとして販売出来るようになりました。
コロナ前(10年間)毎年のように来日していた時とは違う思いがあるとの事でした。
今回は、短い時間でしたが、非常に濃い内容だったのでまとめれず、、
2回に分けて書きたいと思います。

【ギョーム・ボット氏と栗山 明子氏のワイン】

まず、お二人がなぜブルゴーニュでワインを造っているのか?
どんなワインを造りたいのか?
お二人は、実家のドメーヌを継いだのではなくワインが好きで始めたので、“自分たちが造りたい、飲みたいワイン”がコート・ドールのテロワールに合致したのでブルゴーニュでスタートさせたそうです。
造りたいワインは、「生命力のあるエネルギーに満ちたワイン」

合致した3つの条件。

華やかな香りのワイン: ブルゴーニュは母岩が石灰岩が風化した土壌。これが華やかな香りを生み出す。
強い酒躯(ボディ)と熟成のポテンシャル: 炭水化物を造れる土壌が少ない、痩せた土地が多いのがフランス。
それに適応したのがブドウ栽培であり痩せた土地で上手に栽培するとしっかりしたボディと熟成のポテンシャルが強いワインが造れる。
冷涼感と綺麗な酸: ブルゴーニュのグラン・クリュは丘の中腹270m前後。シャントレーヴが持つオート・コート・ド・ボーヌの畑は460mと一番高い標高にあります。
他の畑もネゴスワインも標高の高い畑、ブドウが多いのがシャントレーヴの特徴です。

追記:
昔は標高が高すぎる畑は良いブドウが出来ず、クレマン・ド・ブルゴーニュなどに使われる酸が強すぎるブドウしか出来ませでした。
温暖化でブドウが熟成出来るようになり、冷涼ながらきれいな酸が生まれる畑になったタイミングで買い取る事が出来たのは、嬉しい誤算だったようです。

【シャントレーヴにとっての2021年ヴィンテージについて】

スタートから収量減少:
2019、2020年と暑くて非常に凝縮した年とは真逆で、4月に遅霜で、コート・ド・ボーヌの白を中心に根が焼けてしまって、スタートから収穫量が減る自体に。

対策がunluckyに。。:
サヴィニー・レ・ボーヌ ブランの畑が霜対策でキャンドルを4/4に焚いていましたが、雪が降って積雪してしまい、朝日で根が焼けて全滅。。
オート・コート・ド・ボーヌは標高がさらに高いので、根吹きが遅く、遅霜の被害は免れます。
ですが、2016年同様に霜の被害があった年は、樹自体が弱いのか、、
病気にかかりやすく、ベド病とうどんこ病が広がり、さらなる選果を余儀なくされたそうです。
ネゴスで6銘柄造ることができなくっなった本当に生産量の少ない年になりました。

ニュイはそれほどでも無かったが、ボーヌは被害が拡大した年でしたが、それでも選び抜かれたぶどうで造ったワイン
“赤ワインは軽やかで、タンニンもやわらかくチャーミングな年。”
“白ワインは非常に出来が良く、きれいなテンション、爽やかで奥行きがありながらもしっかり酸がある年。”
そんなシャントレーヴのワインが出来たと話してくれました。

【土づくりの大切さ】

今回メインで話して頂いたのが“ 土壌 ”でした。
日本の農家さんのような土に対する考えが、ヨーロッパに無いそうです。
畑は使えば使うほど、砂漠化していく。
ブルゴーニュのコート・ドールの土は、微生物が少なく貧しい土地だそうです。
これだけ歴史があるのに貧しいと言われうと、、とは思ったのですが、ブドウ以外の農作物が育たない土地だと言えば納得しました。

肥沃な土、サステナビリティーな土壌をつくる大切さ。
それがワインの品質ににつながる事への意識が高まってきていると言ってっました。
土が貧しくなる除草剤の使用もかなり減ってきている。
有機栽培も増えてきているとはいえ、コート・ドール全体で15%前後しか有機栽培等で造られていないそうです。
(フランス全土ではまだ高い方だとのこと)
お二人はドメーヌワインを造るようになり、土壌と栽培にさらなる力を入れることで、
健康なブドウの樹 = 生命力のあるブドウ = エネルギーに満ちたワイン
まさに、2人が造りたいワインです。

【土=土壌ってなんだ?】

鉱物+腐植+生物=土壌。 鉱物は母岩になる砂から粘土(ブルゴーニュは石灰粘土質土壌)まで、その土地の特徴であり、人がつくれないもの。
人が造れる土壌は、腐植(有機物の残りなど)これを人が造る事によって肥沃な土壌ができます。
腐植率を上げるには、生物の為の家作りを行う。
土を潰さず(踏み潰さない)
コート・ドールの土は痩せているので、有機物の割合が少ない。

温暖化がすすんで、冬場に雨が振り、日照りの夏が続くと、土壌は痩せいってしまします。
今までは、年間の降雨量が1,000mmあったので十分であり、土壌の腐植率や有機物などを考えなくても、良いブドウが出来ていた。
ですが、2019年2020年、さらに2022年や2023年など温暖化の影響がある現在は、そうは言ってられない時代になっていると強調されていました。

最近の新しい生産者は、可能な限り自然派といえる栽培が主流に思います。
土壌や栽培に意識があることをうたっている生産者が多いのは、やはり温暖化にて歴史あるブルゴーニュの生産者、独立や若い世代の生産者も変化を余儀なくされていると思いました。

【腐植を増やすために シャントレーヴが取り組んでいること】

土壌の圧縮は最低限に: 山道で人が歩く場所は草木が生えない。人が踏むだけで土壌は圧縮さて生物が育たなくなるのを可能な限り減らすようにする。
鋤入れは最低限に: 3月から7月までしか行わない。(回数は5~6回のみ)鋤入れをすることで腐植が分解され養分が散らばり根が吸収する。
雑草処理などで行うが、やりすぎると樹勢が強くなりすぎる為、回数などの制限が必要。
コンポスト: 堆肥は四足動物の糞などを使用。非常に労力を使うが、2年~3年に1回ほど行っている。
カヴァークロップ: ただ雑草を生やすのではなく、鋤入れ後に13種類の植物の種を手巻きし、3週間ほどで20~30cmほどのカーペット上になる。
収穫時期など馬でソリを引いて畑に入るのに、土を圧縮してしまうので、雑草がクッションになってくれる。
冬もそのまま放置するので、雨水での土壌が流れるのを防ぐ。
放牧: 鋤入れ前に草刈りを行うのですが、放牧(友人の羊20頭)を使って行うのを実験的に行いだしたところ。(オート・コート・ド・ボーヌの畑で実施)

非常に土壌への気遣い、ここに書ききれないほどの考えや思いを話してくれました。
目の前のブドウ造りだけでなく、数年後からその先のワイン造りを意識されている思いも伝わりました。
次回は、質問させてもらったラベルの話と今のアリゴテの話を書きたいと思います。

顔写真

シニアソムリエ 吉間 崇行

JSA認定シニアソムリエ
HRS認定1級レストランサービス技能士
HRSテーブルマナー認定講師(西洋)
元ホテル阪急インターナショナル スペシャリティレストラン 「マルメゾン」マネージャー
2016年に地元神戸にてレストラン エスピスをオープン。マネージャー兼ソムリエとして勤務。現在に至る。